2009/08/19

2008年度在日ビルマ難民たすけあいの会(BRSA)の成果と課題

2008年度在日ビルマ難民たすけあいの会(BRSA)の成果と課題
副会長 熊切拓

BRSAの主な成果

①ビルマ難民申請者のうち少なくとも10人に1人が会員。
②会員数 286名(4月19日まで。3月31日付けで279名)。
③支援会員 10名(4月19日まで。3月31日付けで9名)。
④寄付金総額 2,541,260円 (のべ68名からの寄付)。
⑤仮放免保証金支援(貸付) 13名(190万円)
⑥生活支援金支給 6名(18万円)
⑦保証人支援 18名
⑧面会活動 合計のべ2000人に面会。

BRSA会員のプロフィール
BRSAの成果と課題を論じる前に、本会の主たる構成要素である在日ビルマ難民が置かれている状況について概観しておこう(なお、本会における在日ビルマ難民の定義に関しては規約等を参照されたい)。

〈在日ビルマ難民が置かれている状況〉

1) その多くが難民認定申請中の者であり、日本政府が滞在を認めた難民、在留特別許可者は、数としては増加しているものの、申請数からいうとまだ少ない。

2) 難民認定審査には少なくとも平均2年かかるといわれている。

3) 難民認定申請者は審査結果の出るまでの間、就労、移動に関して著しい制限を受け、また医療は自費で受けなくてはならない。

4) 難民認定申請者のうち非正規滞在の状態で申請を行った者がかなりの割合存在するが、そうした人々は難民認定申請後にもかかわらずいつ何時でも非正規滞在者として警察に逮捕され、入国管理局に収容されうる状態にある。

5) 難民認定不認定処分後、収容される場合がほとんどである。

BRSAのビルマ人難民会員は、そのほとんどが難民認定申請中の者であり、このことからBRSAの会員の一般的なプロフィールを以下のようにまとめることができる。

BRSA会員は、就労を禁じられており、また国民健康保険に加わることができないため医療費は全て自費でまかなわなければならず、さらに滞在資格を持たないため、必要な場合に生活保護などの公的扶助を受けることができない。

そして、会員のすべてが、非正規滞在者として警察により逮捕されたり、不認定処分を受けたことにより、これまで長期間入管に収容されていた経験を持つか、現在収容中であるか、これから収容される可能性を持つ。

一言でいえば、BRSAの会員は、在日ビルマ難民のなかでもっとも弱い立場の人々によって構成されている。BRSA会員のこうした状況を理解してはじめて、公的なセーフティネットとは異なる「民主化のためのセーフティネット」を構築するというBRSAの活動を適切に評価することができる。

会員数
BRSAの活動のひとつの重要な指標となるのが、その会員数である。2009年4月19日現在、在日ビルマ難民の会員は286名。結成から1年過ぎたばかりの組織としては多いといえるし、またこれ以上の会員数を誇る在日ビルマ難民による政治的団体は2〜3ほどしかない。これはひとえに会員勧誘に関わった役員たちの努力の賜物である。

現在日本で難民認定申請を行っているビルマ難民はおよそ1900人と見積もることができ(計算方法については省略する)、ここから、ビルマ難民認定申請者全体のうちにBRSA会員が占める割合、約15%が導き出せる。

現時点のビルマ難民認定申請者の正確な総数を導き出すのは、公的な資料がない以上不可能であるが、上記の概算に基づけば少なくとも10人に1人がBRSA会員であるということはできるのではないだろうか。

会費によって支援基金を運営するという本会の性質上、会員数が多ければ多いほど、支援に割り当てることのできる額が増えるわけだから、無論のこと、このパーセンテージも15%から20%、30%と上昇させたほうがいいに違いない。

だが、単純にそうとばかり言い切れない事情もある。それを2点ほど挙げよう。

1)会員数が増えれば増えるほど、その会員に対するサービスの量も増大すること。

すでに述べたように、BRSA会員はさまざまな問題に直面しており、それは様々な形で会への要請となって表れている。現在、交通費、通信費すら支給されない中、多くの役員と熱意ある会員たちが、面会活動や逮捕された会員のための警察訪問、相談活動、会の運営活動などに奔走しているが、いくつもの問題が未解決のまま残されている。

もしこの状況で会員が例えば500人を超えたとしたら、会として会員の状況に責任を持てない事態が起こりうるのは目に見えている。

さらに会員情報管理、会計処理、連絡業務などの本会の事務作業が行われるのは、原則として日曜日のみであり、それ以外は個々の会員が必要に応じて自宅に持ち帰って作業している。こうした事務作業形態も、300人を間もなく越えるとみられる会員数の増加により、いずれ立ち行かなくなるであろう(また個人情報保護の点からも問題があるのはいうまでもない)。

解決法のひとつは、平日も作業できる事務所と専従スタッフの設置であるが、これはいっぽうで、支援基金に回す金額の削減を意味する。その場合には、その削減に見合うだけの会員数の増加がなくてはならない。

2)会費徴収率の問題
具体的な数値の算出はこれからの課題であるが、会費徴収率の低さは、本会が抱える問題のもっとも大きなものである。

会費徴収率が上がらなければ、BRSAの活動がこの会費をもとにした支援活動である以上、いくら会員が増えても、会としての体力の向上には結びつかない。

こうした状況を改善するためには、会費徴収方法を改めるほか、会員が会費したいと思うようない魅力的な会のあり方を模索する必要がある。

この2つの課題に共通するのは、結成時の原点に立ち返り、BRSAが会員に対して今後どのような支援を行うべきか、また会員たちがどのような支援を必要としているかについて現状をふまえた議論をすることが大事であるということだ。こうした議論を通じてはじめて、会の規模、組織運営、スタッフ体制、事務所の問題、会費徴収率の問題に関して適切な答えを得ることができるであろう。

支援会員
支援会員(定義に関しては規約参照)は現在日本人が10名(2008年度中には9名)。支援会員がもっと増えたほうがいいのはもちろんだが、ただ増やすだけでなく、会の運営に積極的に関わってくれる、つまり役員となってくれるような会員も増やすのも重要である。日本人とビルマ難民の協力をうたう以上、日本人会員の存在はBRSAにとって本質的な意味を担っている。

したがって、支援会員の勧誘に関するなんらかの特別の手だて、方針を議論するべきであろう。

寄付金
支援会員ではないが会の趣旨に賛同して、あるいは支援会員であるが会費とは別に、本会のための寄付をしてくださった方は、のべ68名。2008年度の寄付金の総額は、2,541,260円であった。2回もの1,000,000円の寄付を含むこの寄付金なしには、BRSAはその活動をほとんど遂行することができなかった。寄付してくださった方々には心より感謝を申し上げたい。

基金運営
上記の寄付金、そして会員からの会費、イベント収益(表参照)が本会の収入であり、たすけあい基金となっている(2008年度は4,494,405円。詳しくは会計報告を参照)。この基金からすべての活動資金、支援金、貸付金が支出される。

問題なのは、この基金の性格が十分に議論されていないことだ。つまり、基金とはBRSAの収入すべてを指すのか、それともその一部を必要経費として差し引いた残りを基金と呼ぶのか。あるいは基金のうちいくらが支援に使用していい金額で、いくらをプール金として残すのか。

もちろんこれらの事柄が明確にされなくても、支援をすることができるが(実際に2008年度に行ったように)、それでは基金運営の健全性と持続性は保障されないように思える。また、会員、寄付者への説明責任も十分に果たしているとはいえない。

その点からいうと、2008年度の会計報告はやや物足りないものだ。会計監査の報告の通り、会計処理としては整合性があるにしても、それだけで会の活動のすべてが分かるようには書かれていない。会の経済活動がどのような構造を持つのかが見えてこないのである。この「不透明さ」は基金の性質の不明確さと関係がある。

本会の活動にふさわしい会計のあり方とはどのようなものか、それを見いだすのも2009年度の課題のひとつである。

また、すでに触れたが、会費徴収率の低さもまた真剣に取り組むべき課題である。2009年度には前年度並みの寄付金を期待することはできず、したがって、会費こそが本会の生命線となるのであるから。

組織運営
16名(結成当時は17名)の役員による役員会が本会の実質的な意思決定機関である。役員会は毎月日曜日に開催され、さらに必要な時には臨時役員会が開かれる。2009年3月、4月は総会準備、規約改定という重要議題を抱えていたため、ほとんど毎週、役員会が開かれていた。

しかし、毎週となると、すべての役員が出席できるわけでなく、参加者の少なさから、時には役員会として成立しているのかどうか疑わしい場合もあった。このような会議の集中は、事前準備、効率的な議事の進め方によりある程度改善しうるであろう。

もうひとつの問題は、日本人とビルマ難民との間の意思疎通である。さいわいにして、優秀な通訳が参加してくれるようになったため、言語の面で問題が生じることは少なくなったが、文化や慣行の違いから、時には合意が不可能に思えた時もあった。

これはもちろん、「日本人と在日ビルマ難民でつくる」会であるという性質上、避けられぬことであり、また他のどこにも見ることのできない貴重な体験であるが、ときに不毛な対立により会議時間が浪費される事態は協力して改善していかなくてはならない。

いかに効率よく会議を進めるか、そして、どのように合意に達するか、といったテーマでワークショップを開催するというのもひとつの手であろう(これは同時に民主化に関する具体的なトレーニング・プログラムともなりうる)。

なお、2008年7月27日の役員会で支援部会、広報部会、運営部会、組織部会、社会活動部会、規約部会、資金調達部会の7つの部会の設置が決定された。これらの部会は、役員会体制を含めて第2回総会に提出される規約案において大幅なリフォームが加えられている。

支援活動
2008年度のBRSAの会員への支援活動をまとめると次のようになる。

〈入国管理局収容者の会員に対して〉
(1)仮放免許可に際し、入国管理局に納付する保証金の全額(30万円)もしくは一部(15万〜5万)を13名に貸付。総額190万円。

(2)仮放免申請に際し保証人の当てのない会員収容者18名のために身元保証人となる。また釈放の手続きを行う。

(3)約30名の収容者のため、仮放免の申請人となる。

(4)品川、牛久に収容されている難民、のべ2000人への面会活動。差し入れや相談、入管提出要資料の翻訳などの活動。

(5)非正規滞在者として警察に逮捕された会員への面会、差し入れ。

〈それ以外の会員に対して〉
(6)6名の会員に対する医療費・生活費支援(総額18万円)。

(7)入国管理局の手続き、難民認定申請に関するさまざまな事柄についての相談活動。また入管提出要資料の翻訳など。

(8)医療機関に通院・入院する会員、あるいは区役所などの公的機関に行く会員のための付き添いや通訳、交渉代理などの支援。

(9)RHQやJARなどの支援団体への紹介活動(入管収容者に対しても同様)。

上記のどの活動も難民支援にとって本質的な意味を持ち、また同時に献身的な役員と会員にとっての日常的業務となっている。

保証金支援の内訳を別表に掲げる。この表も裏付けるように、入国時に成田空港で収容される難民が増加傾向にある。これらの難民のほとんどは日本語も分からず、保証金も、住む場所も、保証人も準備するのが困難な人々であり、BRSAのみならず、日本の難民支援の現場において今後大きな問題となるであろう。

番号 性別 収容先      仮放免時期 貸付金
1    M  品川        08/07    15万円
2    M   品川        08/07    15万円
3    M* 牛久        08/09     20万円
4    M* 成田→牛久  08/09 15万円
5 M* 牛久 08/12 10万円
6 M 成田→牛久 08/12 15万円
7 F 牛久 08/12 15万円
8 M* 品川 09/01 30万円
9 M* 成田→牛久 09/02 5万円
10 M* 成田→牛久 09/02 5万円
11 M 牛久 09/02 15万円
12 F 品川 09/03 15万円
13 F 品川 09/03 15万円
合計 190万円
(*印は会が保証人支援もした会員)

収容された会員に対する保証金190万円のうち、返還されているのが27万円。経済状況の悪化する中、返済は滞りがちであり、未返済金をいかに回収するかが、大きな課題となっている。

医療費・生活費支援は、返還義務のないものであり、そのため額は少ない。とはいえ、困窮する難民は今後増えると見られ、RHQの難民保護費が厳格化されることもあり、ますますBRSAに対する支援要請は増大するであろう。いわば「日本国内における難民の危機」とでもいうべき状況にどのように対処するかが、 2009年度のBRSAの大きな課題である。

その他の活動
 (1) 日本語版(http://brsajp.blogspot.com)、ビルマ語版(http://brsa-burma.blogspot.com)ウェブサイトの作成。

 (2) 在日ビルマ民主化団体と協力して、デモ活動などにBRSAとして参加。

 (3) ビルマのサイクロン被災者のための街頭募金を行い、100万円を支援。

 (4) 6月22日に、第1回BRSAセミナーを開催し、港町診療所の山村淳平先生と熊澤新さんより話を聞いた。

 (5) 春のダジャン、秋のダディンジュの祭に出店。

 (6) 夏と正月に日帰りバス旅行を企画。

 (7) メディアを通じたBRSA活動の紹介(新聞・テレビ取材など)。

これらの2008年度の活動を通じて、BRSAはビルマ難民支援団体、ビルマ民主化を求める団体のひとつとしてしっかり認知されるようになったといえるだろう(活動の詳細に関しては次ページ以降を参照されたい)。
 
特筆すべきこと
2008年12月のRHQの一時的保護費打ち切りに関して、最初に取り上げたのがBRSAのウェブサイトであった。「これがきっかけとなって、このことが大きく報じられた」とまではいえないが、この件をきっかけに、BRSAの活動がより広く知られることとなった。

ニュースは実際に打ち切られた会員の連絡に基づくものであり、現場の難民たちの声に即座に反応できる俊敏さをこれからもBRSAの持ち味として保つことができればよいと思う。

2008年度の活動を支えてくださったすべての会員、役員、支援者の皆様に感謝申し上げます。(了)

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